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ゲームをプレイしていて、『何を食ってたら、こんな発想に行きつくんだ?』と思ったことはないだろうか。
インタビュー企画『原風景、お邪魔します』では、インディーゲーム制作者のそうした発想の根っこに、ちょっぴりお邪魔していく。

第一回のインタビューのお相手は、IndieGame100 #2でも取り上げさせていただいたMSTさんにお話を伺った。
- 代表作 『STRANGER SAGA -流れ者バッチとイスキエルドの野望-』
- 小説も書かれてらっしゃいます 『Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─』
- Xのプロフィールはこちら
――では、早速始めさせていただいて宜しいでしょうか?

大丈夫です! いつでもどうぞ!
――ありがとうございます!よろしくお願い致します!
では、まずは軽いジャブの質問からです!
- Q1.自己紹介と、一番最後に食べたおでんの具を教えてください!
- Q2.MSTさんの『STRANGER SAGA -流れ者バッチとイスキエルドの野望-』は一言で言うとどんなゲームでしょうか?
- Q3.製作途中に「ここはもう少し一般的な作品に寄せて、ストーリーに幅を持たせたり、システムを複雑にしようかな……」という誘惑にかられた瞬間はありましたか?
- Q4.MSTさんとしては、ご自分の創作スタイルは薄味志向と濃厚志向の、どちらに寄っているとお考えでしょうか?
- Q5.”忘れられないゲーム”を三つ、忘れられない思い出といっしょに教えてください。
- Q6.シミュレーションRPGツクールで初めてゲームを完成なさった時のご経験で、今に活きているものはなんでしょうか?
- Q7.もしかして結構ロボアニメがお好きですか?
- Q8.次回作の構想、または、もし全く別ジャンル・作風で作るならどんな作品にしたいですか?プレイヤーの皆さんへのメッセージもお願いします!
- 終わりに
Q1.自己紹介と、一番最後に食べたおでんの具を教えてください!

MSTです。
格ゲー好き古参ゲーマーです(SNK派)。
最後に食べたおでん……
たしかコンビニで大根かなあ、味噌をつけて食いました。
――ありがとうございます!
MSTさんはXのプロフィールでも格ゲー好きを公言されてますよね。
おでんであったかいものを食べてらっしゃっるのには、ちょっとほっとしました!
ストサガをプレイしただけの滅茶苦茶偏見だらけのイメージで、MSTさんって「鶏のササミ肉をプロテインで流し込む」系の修行僧みたいな生活をされてるんじゃないかと勝手に思ってたので……(笑)
実際のところMSTさん的には結構ストイック寄りなのでしょうか?それとも「いや、割と面白寄りよ?」な感じだったりされるのでしょうか?

うーん、どうでしょう?
拘るところと緩いところの差が結構両極端というか。
拘りどころが周囲に理解され辛い感じがしていますね(笑)
――あー。確かに言われてみると、イメージ通りです。
というあたりで、早速本題に入らせて頂こうかと思います。
Q2.MSTさんの『STRANGER SAGA -流れ者バッチとイスキエルドの野望-』は一言で言うとどんなゲームでしょうか?

ストサガを一言で言うと……『私のプレイしたかったSRPG』ですかね。
今は、重厚なストーリー&世界観とか、色々複雑で独自性のあるシステムとか、それらを前面に出したSRPGの方が主流のようであり、それが面白いSRPGを構成するために欠かせないものであるかのように、表向きは見えていました。
でも私はSRPGの元来のルールそのままで作るゲームでも、面白さを発揮できるポテンシャルは充分あると考えていたんです。 後は物語をじっくり読むのも、複雑なシステムを読み解こうとするのも脳のカロリーをそれなりに使うので、そういうSPRGが好きな人も多いのかもしれないけれど、そんな必要経費を払わずとも楽しめるSRPGの形もあるだろうと。
自分はそっちがプレイしたかったのですが、誰も作ってくれなくて、なら自分で作るしかねえ、とそれで出来たのが『STRANGER SAGA』です。 開発段階でテストプレイして自分的な手応えは充分に感じていたので、後はこれがありかどうかを世に問うだけだと、販売に踏み切りました。
とはいえ最初は、これを遊びたいのが本当に私だけで、他の方々から全く共感を得られない可能性も考えないわけではなかったです(苦笑) こうして販売して好意的な感想をいくつも頂けてホッとしております。
――――おお、『私のプレイしたかったSRPG』ですか!確かに『STRANGER SAGA』をプレイしていると、随所でお約束をサラッと流して、”さあ、じゃあ君はこのステージはクリアできるかな!”と投げかけられているような感覚が強くありました。
では、ここから少しずつ深堀させて頂きます。
まずは『STRANGER SAGA』のミニマムな作りについてです。
かなり思い切った設計を徹底されていたと感じたので、質問です。
Q3.製作途中に「ここはもう少し一般的な作品に寄せて、ストーリーに幅を持たせたり、システムを複雑にしようかな……」という誘惑にかられた瞬間はありましたか?

最終ステージの味方ユニット1人1人の会話がそれですね。
ストサガはストーリーパートがゲーム部分を邪魔することがないように全体のテキストは抑えていました。
もしシンプル、ミニマムな設計に徹するなら、最終ステージのあれは入れないでしょう。
入れたいから入れたものです。
他を絞ったので最終ステージだけなら許してくれるかなと(笑)
――あのユニットを動かす時の会話ですね!
言われてみれば確かに、完璧にシンプルだけでいくなら入れない要素ですね。それだけに、最終ステージだからこそのお祭り感というか、あえて最後にお約束を持ってくるのに驚いた印象があります。
では、ここからMSTさんのシンプル・ミニマム志向と作品世界を広げていく志向のせめぎ合いについて、ちょっと違う切り口から伺ってみたいことがあります。
Q4.MSTさんとしては、ご自分の創作スタイルは薄味志向と濃厚志向の、どちらに寄っているとお考えでしょうか?
実は今、MSTさんのXリンクから読める『Evil Revenger』を読み進めてまして…… (現在、チェントがネモさんに剣を習っているエピソードです)
愛憎入り混じるダークファンタジーが個人的にどストライクなのもありますが……、めちゃくちゃおもろいじゃないですか!!!
お話として面白いのはもちろんなのですが、レビュアーの端くれとしては『STRANGER SAGA』と『Evil Revenger』とでモチーフや基本構成に類似点がある一方で、作品全体のトーンが180度違っているところに滅茶苦茶疑問が湧きました。すっきりとした『STRANGER SAGA』と対照的に、『Evil Revenger』は濃厚ゴリゴリの復讐譚だと感じまして。
“いったいMSTさんの創作スタンスは、あっさり端麗野菜タンメン寄りの薄味志向がメインなのか、こってり背脂魚介豚骨寄りの濃厚志向がメインなのか?”
という疑問です。これに関してはいかがでしょうか?

まさか『Evil Revenger』を読んで頂けているとは! ありがとうございます!
私の創作スタンスは 「自分がユーザーとして作品に触れる際に不満に思っていることへの自分なりのアンサーを作る」 だと思います。
そういう意味では『STRANGER SAGA』も『Evil Revenger』も同じスタンスで作られたものです。 違うのはゲームに望むアンサーと、物語に望むアンサーですね。
物語の好みと『STRANGER SAGA』の物語があっさりしている理由

私の物語に対する好みは割と偏っていて、好き嫌いが激しいです。
具体的にどういう物語が好きかはストサガの話とはズレるので省きますが(もし気になる人がいたら『Evil Revenger』を読んでみてね) 拘りが強くて好き嫌いが激しい、という性質なので、合わない物語も多く、ゲームとしては楽しいのに、物語が好きじゃないから没頭できない、という作品にもしばしば遭遇します。
特にRPG、SRPGにおいては物語の占める割合は大きいため、無視できなかったりします ストサガは「純粋にゲームとして楽しんで欲しい」作品であったため、この「物語が合わないからゲームとして楽しめない」という状況を避けたかったのです。
そのためにもし物語が合わなくてもさらっと読み飛ばしてすぐゲーム部分に突入できる作りにしました。小説を書くときはそもそも物語そのものが本体ですから、そこをあっさりにしても何も残らないですし、とことん自分の好みの物語を詰め込んだというだけですね
『STRANGER SAGA』のゲームシステムがシンプルな理由

システムをシンプルにしたのは「シビリアン育成を最大限に楽しんでもらうため」というのが一番大きいです。
これを楽しんでもらうには、シビリアンを何にクラスチェンジしたか、クラスを変えたことではっきり違いを実感できるようにする必要がありました。
ナイトにした時、アーチャーにした時、バーバリアンにした時、性能はがらりと変わり、取れる戦術も全く変わる。
だからこそ、その戦術がぴったりハマって戦果を出せた時には「このクラスを選んでよかった」と思えて凄く楽しくなる。次のシビリアンのクラスも真剣に悩むようになる。悩むのもまた楽しい。
上記のような作用は、要素が増えれば増える程に分散され、薄れると私は考えています。

例えば「クラスチェンジ」「スキルツリー」「武器強化」「隣接ユニットの支援効果」「バフデバフ」のような複数の強化要素を詰め込んだゲームがあるとします。
この場合、全要素をフルに使いこなした時がMAXの強さであり、それなら1要素くらいサボってもそれほど致命的ではなくなりがちだと思います。
そういうゲームにしてしまうと、シビリアンのクラスチェンジ先が適当でも、残りの4要素を徹底すれば無視できてしまう。選択をミスってもリカバリーが効くという考え方もできるかもしれませんが、CC先に真剣に悩む価値が薄れるという点は否めません。
ストサガがシビリアンの運用にとことん悩んで、自分だけの部隊メイキングを存分に楽しんで貰うためには、他の強化要素をできるだけ絞るのがベストだと、そう考えたためにこのゲームは今のようなシンプルな形に収まりました。

……と話が元の質問からだいぶ膨らんでしまった気がしますが、このような「遊んでほしい1つの要素を際立たせて最大限に楽しんで貰うために他の要素を絞ってシンプルにする」というやり方は、私のよく使うゲーム制作スタイルになっていると思います
――なるほど!要素を増やしてしまうと「クラスチェンジにガチで悩む楽しさ」が薄まってしまうと。
「一つのコンセプトをひたすら煮詰めに煮詰めて濃縮する」ことが徹底されているおかげで、ストサガをプレイした時の「あっさりした手触りなのにプレイ体験が濃い」理由がなんとなくわかった気がします。
では、ここからインタビュー企画名でもある、原風景へと降りて行ってみたいと思います。
Q5.”忘れられないゲーム”を三つ、忘れられない思い出といっしょに教えてください。

格ゲー好きですが、今回の趣旨から完全に脱線しそうなので……
とりあえず格ゲータイトルは除いておきます(笑)
ファイアーエムブレム外伝(FC)

やったことのある人なら、このタイトルからストサガが大きく影響を受けていることはバレバレだと思います(笑)
このゲームは加入した村人を好きにクラスチェンジして部隊編成を楽しめます。
初めてやったFEシリーズがこのタイトルでして、初プレイ時は村人全員バロン(重装クラスの最上位)にして「これなら何も効かない! 無敵! 最強!」とか言っていました。
攻略情報などを揃えると、全員バロンなんて実は最強でもないんですが、自分で信じて選んで結果が出ることの楽しさを知ることができました。
ストサガでもその楽しさを皆に味わってほしいという思いを込めたつもりです。
ロマンシングサガ2(SFC)

これより面白いRPGないんじゃないの? ってくらいお気に入りです。
リマスターもリメイクも全部遊びましたし、何週クリアしたかわかりません。
もう信者ですね(笑)
語りたいことが多過ぎて何を話せばいいか困りますが、個人的な思い出ということであれば、そうですねえ……
『初見で運河要塞の門の強行突破』を友達に驚かれたことでしょうか。
運河要塞というダンジョンの門番が異常に強くて、本来は門を通らずに潜入するルートでクリアするのが普通なのですが、攻略情報も何も知らない私はパーティをめちゃくちゃに鍛えて門番を倒してしまい、当時の友達は驚いていました。
攻略方法が複数あるフリーシナリオのロマサガだから起こることですね。
(他にも”海の主”を和解せずに倒すとかいろいろやらかしました)
でも、こういう攻略情報抜きに自然なままハプニングを楽しむというのも面白さではないでしょうか。
もちろんフリーシナリオ要素などロマサガ2の魅力の一片でしかなく、ここだけでは語りつくせない魅力が山ほどあるんですが、もしやったことない人は超おススメなんで是非やってください!
原作もリメイクも全部おすすめです!
シミュレーションRPGツクール(PS1)

ゲームかというとちょっと違うかもしれませんが、”忘れられない”タイトルということで選出させて頂きました。
ツクールシリーズのSRPGが作れるタイトル、世間では実はあまり評判の良くないプレイステーション1版の『シミュレーションRPGツクール』です
これを選んだのは、私が初めて完成までゲームを作り上げたのがこのタイトルだったからですね
色々作りにくかったり融通が利かない部分がありましたが、なんとか作り上げて友人達にもプレイしてもらい評判も悪くなく、ゲーム作りってこんなに楽しいんだと思えたものです。
『電撃Playstation-D』という雑誌にも投稿しまして、付録CDに収録して頂いたりもしました。
作ったゲームは今振り返ると色々拙い部分があると思えるものではありますが、それでもそれなりに面白く遊べるものを作れたと思っています。
後々にネットでこのツールの評判が良くないことも知り、そんなツールでもそこそこ面白いゲームを作れた私は実は意外と凄いのでは? という変な自信にもなったりしました(笑)
――ありがとうございます!!
『電撃Playstation-D』って、あの体験版と読者投稿のオリジナルゲームと異様に耳に残る歌が同梱されてる雑誌ですよね。一時期毎号買ってました。
答えて頂いたゲームについても目茶苦茶普通に語りたくなるんですが…インタビュアーが脱線しちゃうわけにもいかないので、質問に徹します(笑)
三つ目に挙げて頂いたシミュレーションRPGツクールについて、少し伺ってみたいです。
Q6.シミュレーションRPGツクールで初めてゲームを完成なさった時のご経験で、今に活きているものはなんでしょうか?

シミュレーションRPGツクールの経験というか、コンシューマー機のツクールシリーズ全般のお話になります。
SFC~PS時代のツクールシリーズは、今のようにスクリプトやプラグインなどはなく、多くの制約がありました。
思い描いた通りのゲームシステムが足せない中で、ありもののシステムの中でも面白い物を作ろうと試行錯誤した経験は今も活きていると思います。
今のゲーム作りで、メインの部分以外を躊躇いなくシンプルにできる理由に「シンプルなままでも面白くできるしな」という実感がある、というのも大きいです。
これは制約の中で作ってきた経験があればこそだと思っています。
――ありがとうございます!
ありもので作った経験が「シンプルでも面白くできる」という実感に繋がっている……経験に裏打ちされた自信が今を支えているのは”強い”と思いました。
ではちょっとだけ趣向を変えて、創作のインプットについての質問です。
バーバリアンをクラスチェンジした時の実績名が、宇宙線に導かれちゃう系の赤くて六角形の顔をしたロボっぽかったり、ステージ前会話で黒くて3つ連なる星っぽい会話をする方々がいらっしゃったりしますが……
Q7.もしかして結構ロボアニメがお好きですか?

アニメの好みはロボに限らず、って感じですね。
ガンダムはファーストと0080が特に好きで、スパロボではビッグオーとダイガードを好んで使い、一番好きなアニメはスクライド、そんな人間です。
ただ最近は新作アニメを観るより、ついつい旧作を観返してばかりいるので、インプットを疎かにしている姿勢はクリエイターの端くれとしてどうなんだと、自分でも少し反省してます。
――ありがとうございます!アニメも渋いところを突かれますね。
インプットにも自省的な姿勢でいらっしゃるのが、なんというかMSTさんらしいと思いました。
では、名残惜しいですが最後の質問です!
Q8.次回作の構想、または、もし全く別ジャンル・作風で作るならどんな作品にしたいですか?プレイヤーの皆さんへのメッセージもお願いします!

ストサガの続編も考えていますが、一回別ジャンルを間に挟もうと思っています。RPGの予定です。
ジャンルが変わっても、遊ばせたい部分に集中できるよう、それ以外の部分はとことんスリムにシンプルに仕上げる方向性は変わらないと思います。
SRPGだけじゃなく、RPGでもストサガに勝るとも劣らない面白さをお届けできるよう開発を進めていきますので、ご期待ください!
STRANGER SAGA』をまだ遊んだことが無い方は、セーブ引継ぎできる体験版もございますので、良ければ触れてみてください!
今後も皆様に楽しんで頂けるものを作れるよう引き続き頑張ります!
それでは!
――ありがとうございます!レビュアーとしてどうこうじゃなく、普通にいちゲーマーとして滅茶苦茶楽しみです!!
質問は以上です!今回はお忙しい中お時間を取ってくださって、ありがとうございました!!
このインタビューで気になった方はMSTさんのXもチェックだ!
終わりに
いかがだったろうか。
読者の皆さんも、MSTさんの原風景を体感できただろうか。
余談だが、筆者はインタビューというものを人生で一度もやったことが無い。
そのため、今回の記事では内心滅茶苦茶ビビりながらMSTさんに打診してご快諾を頂き、諸々お手数をおかけしながらも(本当にありがとうございます!)、何とか公開まで漕ぎつけることができた。
インタビューをしていくうちにお互いがどんどんヒートアップしていったので、そういう現場の熱もお届けできていたら嬉しい。
なお、『原風景、お邪魔します』では、今後もインディーゲーム制作者の方にお話しを伺っていく。
もしインディーゲーム製作者の方で「ちょっと興味あるかもなぁ」という方がいらっしゃったら、お問い合わせフォームからご連絡いただけると幸いです。
というわけで、よきゲーマーライフを!
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!!
