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インディーゲームをガシガシプレイしてはレビューを書く企画、IndieGame100の四作目は『いのちのつかいかた』を取り上げるッッ!

ゲームジャンキーの貴方から、とんがったゲームに興味のあるあなたまで。
足掛け四か月にわたって全エンド制覇、全基本クラス・全上級クラスを一通りプレイした筆者が、本作の「何が面白いのか」をプレイ体験と設計の両面から掘り進んでみたい。
『面白さを言語化する』ことに徹底的にこだわっているので、自作の魅力をどう伝えるか悩んでいる開発者の方にも参考になる記事になれば幸いだ。
ネタバレは避けるので、そこんところは安心してくれ。
ってわけで、始めるぞッッ!!
- 古典的なエッセンスを昇華させた、「新しき良き」JRPG
- 「死に覚え」「試行錯誤」「緊張の一瞬」を丸ごと味わえる、手汗ドバドバのバトル
- タイトルに偽りなし。「いのち」の使い方にフォーカスしたハードなシナリオ。時々コミカルだったり可愛かったり。
- シナリオ、バトルともにどろり濃厚ゴリゴリなつくりなので、プレイしていてカロリーを極端に消耗するのには注意。
ゲームの概要
ジャンル:RPG
デベロッパー:だらねこげーむず/Daraneko Games
パブリッシャー:PLAYISM
開発国:日本
プレイ時間:一周目のクリアまでは20時間弱。全エンドコンプリートに55時間ほどだった。
「いのち」の使い方を軸としてゲームブック風に進行するストーリーと、QTE×高度な戦略性の組み合わさったバトルが特徴の「新しき良き」JRPG。
先に書いておくと、この『「新しき良き」JRPG』というフレーズは筆者考案のものではなく、ストアページ記載のフレーズだ。
あまりにもこのゲームを端的に表しているので、表現をお借りした。
このフレーズには、「古典が築き上げた土台の、その先を目指す」スタンスが色濃く出ている。
本作は「昔懐かしい」ゲームではない。
古典的なゲームデザインのうち、今なお通用する要素を丹念に抽出し、現代では遊ぶのに厳しい要素を躊躇なく捨て去ったことで生まれた、いわば古典を再設計した作品だ。
ゲームブックから受け継いだものと袂を分かったもの
本作が面白いのは「ゲームブックっぽいから」ではない。
もっと掘り進めて言うと、ゲームブックの持つ「自分の選択に責任を負う覚悟」をゲーム体験の中核として昇華したところにある。
まずよぉ、ゲームブックってなんだぁ???
ゲームブックをご存じない読者も結構いらっしゃると思うので、軽く説明する。
簡単に言うと、「選択肢式のアドベンチャーゲームに、サイコロを使ってバトル結果や探索結果を決める要素を足した読み物」だ。
プレイヤーは正面から敵と戦ったり、隠れてやり過ごしたりすることを決め、その結果をサイコロを使って成否をジャッジする。ジャッジの結果により、次に読むべき箇所が提示されて、そこを読んで次の行動を決める……という流れで進む。
有名どころでは『ソーサリー』や『カザンの闘技場』あたりだろうか。
『いのちのつかいかた』は、そうしたゲームブックのようなテイストでゲームが進行する。

アナログゲーム愛好家には、「TRPGをソロで遊べるようにしたもの」と言えば分かりやすいだろうか。
実際、TRPGの中にはソロで遊べるシナリオを「ゲームブック的に遊べる」と表現して売り出しているものが多数ある。
ゲームブックへのリスペクト
本作がゲームブックの系譜を継いでいる部分はやはり、プレイヤーが主人公の視点になり、選択がダイレクトに展開を動かすことだろう。
特に象徴的なのが
- 形だけの選択が無い
- 地の文から一貫して「君」と呼ばれる
ことだ。
形だけの選択肢が無い
これはゲームのデザイン面でのゲームブックへのリスペクトだ。
例えば、次のような場面を思い浮かべて欲しい。
“君は、ここで仲間を裏切るかどうかを決めなければならない。”
▶仲間を裏切る
▷仲間を裏切らない
(”仲間を裏切る”を選択する)
“仲間を裏切るなんてできない!!自分たちの絆をもう一度考え直そう”!”
“君は、ここで仲間を裏切るかどうかを決めなければならない。”
……(以下無限ループ)
ちょっと極端な例だが、特にJRPGだとよく目にする場面ではないだろうか(こういうゲームが悪いと言っているわけではないので、そこは誤解の無きよう)
「選択肢として提示はされるものの、実際にはその行動を取れない」という場面は、『いのちのつかいかた』には存在しない。
選んだ行動を、主人公は全て実行する。無限ループの選択肢は存在しない。
そうした選択の積み重ねで迎えるエンディングは時に、残酷で悲痛な結末につながることもある。
地の文から一貫して「君」と呼ばれる
これは主に体裁面での、ゲームブックへのリスペクトだ。
ゲームブックは、英語圏から輸入され翻訳されたものが、日本ではメジャーどころだ。
英語では、読み手のことは”You”と本から直接読者に語り掛ける形で呼ばれる。
そのため、翻訳でも主人公は「君」として表現されることがほとんどだ。
『いのちのつかいかた』は基本的な語り口の面で、明確に古典的なゲームブックを踏襲しているといえる。
ゲームブックのお約束を外して、遊びやすさを重視したところ
さて、そんな本作だが、明確にゲームブックお馴染みの要素を(おそらく意図的に)外している部分も多くみられる。
それらはいずれも、現代基準での遊びやすさ、認知のしやすさに関わる部分に集中している。
ひとつずつ見ていこう。
即死選択肢が無い
ゲームブックにおいて、即死選択肢はお家芸と言ってもいい。
例えば次のようなものだ。
君は並ぶもののない屈強な戦士だ。
冒険の旅の途中で、老婆の住むあばら家を見つけた。
老婆は親切にも君に食事を提供し、泊めてくれるという。
体力を温存したいので、君は老婆の厄介になることを選択した。
老婆に貰ったスープを飲み終えた時、君はある違和感に気付く。
手が震え、心臓が早鐘を打ち、視界がぼやけてきたのだ。君の肌はみるみる紫色に変色していく。
毒を盛られたのだ。
急速に薄れゆく意識の中で君が最期に見たのは、老婆が包丁を持って君ににじり寄る姿だった。
君の冒険は終わった。
~End~
極端……というわけでもなく、割とゲームブックではよくあるゲームオーバーの形だ。
「超戦闘特化のキャラでも、戦闘すらさせてもらえずにゲームオーバーになる」というのは、ゲームブックあるあるのひとつ。
これはこれで冒険を実際にしている感じがして面白いのだが、戦闘にフォーカスした現代のRPGでこれをやると、番外戦術で負けさせられた気がして気持ちよく遊びづらい。
『いのちのつかいかた』には、こうした「ゲームブックあるあるの選択肢」が無く、罠にかかってもHPやMPが減る程度で即座にゲームオーバーということはない。
後述する通り、本作はバトルに重きが置かれた作品なので、”ゲームオーバーになるのはバトルに負けた時”という不文律が一貫している。
そのおかげで、「危険な冒険をしつつ、最後はバトルで決める」という遊びの導線がスムーズに敷かれている。
プレイヤーは自分だけの冒険を堪能したうえで、しっかりとバトル・ビルドの手ごたえを楽しめる。
「プレイヤーのバトルへの期待値を裏切らない」という感覚は、極めて現代的だ。
無限ループ型のマップが無く、マッピングの必要が無い
ゲームブックの呪縛のひとつ。
「やたら分かれ道が何度も連続して出てくるなぁ……」と思っていたら、実は特定の進行ルート以外は無限ループになっている……というのもゲームブックあるあるだ。
これを避けるため、ゲームブックのプレイヤーは往々にして自力でのマッピングを迫られる。
イベントのフローチャートを自ら書き、脱出口を探すのだ。
こうした古典的なゲームブックの遊び方(……というより苦しみ方に近い)は本作には存在しない。

現在地や移動可能なポイントは視覚的に明示され、マップ構造も無限ループしたりはしない。
下方判定オプションがTRPGリプレイ動画勢を意識している
ニコニコ動画やYoutubeを通してリプレイ動画を観て、TRPGに興味を持った人は多いはず。
そうしたリプレイ動画において、日本で最もメジャーなのは、やはりCoC(クトゥルフ神話TRPG)だろう。
このクトゥルフ神話TRPGは『サイコロの出目が能力値”よりも小さい”なら判定に成功する』という下方判定のルールが採用されている。
実は、『いのちのつかいかた』はゲーム内オプションで下方判定ルールを選べるようになっている。

目立ちにくいオプション項目ではあるが、現代日本のTRPG文化への訴求意識を感じた。
戦闘予測とQTEが生む、読みと詰め

『いのちのつかいかた』の戦闘システムは、今までにありそうでなかったものとなっている。
まず、ターン開始時のプレイヤーには画面右下にある敵の行動予測が開示される。
これをもとに三回分の行動を選択し、敵の攻撃時にはQTEでのガードもしくは回避を行う……という流れだ。
敵にダメージを蓄積させると怒り状態となって攻撃が激化する代わりにこちらから与えるダメージも増加する。
また、敵が大技を使った次の行動時には、いつもより大きなダメージを与えられる。
ブーストゲージを溜めることで、与ダメージアップや被ダメージダウン効果を得られる。
ボス戦は、いわゆる「死に覚え」の要素が強く、いかに相手のパターンを読み、戦略と装備を最適化するかがカギとなる。
「戦略を組み立てる」ことに特化したコマンド戦闘
まずもって、敵の行動予測システム・怒りシステム・大技後のダメージアップ・ブーストシステムが有機的に絡み合い、非常にコマンド選択式バトルとの相性がいい。
たとえば、怒り状態寸前の敵が大技を使ってくることが分かっているターンには
- 防御に専念して、大技をしのぐか?
- 大技後にブーストを乗せた大ダメージを狙うために、攻撃バフを積んでおくか?
- 怒り状態への移行を見越して、HP回復をしつつ小技で小突いておくか?
といった判断が生まれる。
もっと言えば、「あえて怒らせたうえで大技を使わせて、そこに最大火力を叩きこめるように、2ターン前からバフをかける順番を調整しておく」といった作戦を立て、戦いの流れをコントロールすることもできる。
こうしたシンプル極まりないルールが、非常に高い戦略性を生んでいる。
特に、お馴染みのコマンドバトルに戦闘予測死の要素が加わることで、戦略性が一気に急上昇している。
このバトルの方式は、正直言ってもっと流行って欲しい。
戦いの実感に直結するQTEシステム
ガードや回避はQTE(タイミングよくボタンを押すことで成否が変わる方式)で行われ、タイミングがいいほど被ダメージを抑えられる。
このQTEでは、装備重量が軽ければ軽いほど、SPDの能力が高ければ高いほど受付猶予時間が伸びる。
敵に素早さのデバフをかけたり、盲目状態にしたりすることも有効だ。
これにより、「ビルドが戦いのタイミング取りを左右する」という、さながらアクションRPGのようなプレイ感をコマンド式RPGで味わえる。
このタイミングが命となるQTEシステムの緊張感が、先述した高度な戦略性と組み合わさるとき、何が起こるか?
ダメージを与える作戦に夢中になって、回避が疎かになるかもしれない。
防御タイミングを合わせることに躍起になる余り、有効打を与える作戦が頭からすっぽ抜けるかもしれない。
あと一歩のところまでボスを追い詰めたのに、ほんの一瞬の油断で回避をミスって反撃を食らってしまったら……
落ち着け。考えろ。今、どうやってこいつを倒せばいい?
読みを巡らしながらも切り結ぶ、戦いの手触りがそこにある。
「戦ってる感」は「反射神経を要求される」という意味ではない。
もちろん、「ポテチをかじりながら作戦を考える」という意味でもない。
思考を重ねた後に訪れる一瞬の緊張が、「今、戦っている」という実感を強くする。
プレイ感がガラリと変わるキャラカスタマイズ

戦闘に関わる大きな要素として、キャラのカスタマイズがある。
カスタマイズは自由な能力値へのポイント割り振りと、クラスの選択によるスキル習得の二要素からなる。
ポイント割り振りは1ポイントの重みが高く、ほんの少しポイントを割り振るだけで目に見えて火力が上がったり、敵の攻撃を回避しやすくなったりする。
クラスも、火力特化に状態異常などの搦め手特化、クリティカル狙いなど、多様な特徴を持つクラスの中から選べる。
こうしたカスタマイズの違いは、プレイ感にダイレクトに影響を及ぼす。
例を挙げよう。
魔法に特化した上級クラスに賢者がある。
個別記事でも書いたが、この賢者は「詠唱」というチャージ行動を挟むことで瞬間的に大火力を放出することができる。
この特性はシステム解説として挙げた”怒り”・”大技後のダメージアップ”・”ブースト”システムと極めて相性が良く、「ここぞ!!」というタイミングに極大魔法を叩きつけることができる。
それとは対照的に、剣聖はリソース回収能力に優れ、有り余るリソースを吐き出し続けながら中威力の技を何度も何度もぶつけ続けてガチンコの殴り合いをするのに向いている。
こうしたカスタマイズ性と先述した戦略性、QTEのバトルが溶け合い、「自分で選んだ戦法で、試行錯誤の末に強敵を撃破する」快感を存分に味わえるようになっている。
ハードなシナリオと可愛いケモノヒロイン、ここにいます
いのちに向き合うハードなシナリオ
「いのち」の使い方にフォーカスしているだけあり、今作では非常にハードなシナリオが展開される。
主人公だけでなくNPC達も、何らかの形で「いのち」に向き合っていく。

「いのち」をめぐるプレイヤーの選択次第で主人公ゴーシュの執着が変化し、それによってエンディングも変わるマルチエンディング形式だ。
エンディングはいずれも、何らかの形での痛みを抱えながらも、救いを感じさせる内容になっていて読後感が非常に心地よい。
それでいて、主人公がしてきた選択の代償は一切逃げることなく描写されるので、ご都合主義な感じもない。
ネタバレを避けて言うと、個人的には”命に執着しながら戦うも、徐々に他者に情が移っていく”ルートのエンディングが一番好きだ。くそっ、ネタバレありで語りてぇなぁ!!
コミカルだったり可愛かったりするギャップ
とはいえ、始終ハードなわけではなく、案外コミカルな場面や可愛いシーンもある。

かわいい。
主人公のゴーシュはこの画像のような困り顔をすることが結構多い。全エンドをクリアした筆者としては、主人公は「2枚目になりきれない2.5枚目」という印象だ。
こうした場面は一服の清涼剤となるだけでなく、「本当にこのまま戦い続けていいのか?」「戦う以外にもいのちの使い道はあるんじゃないか?」という、プレイヤー自身の自問自答を促す。
個人的に、「この作品特有の没入感の高さは、シリアスとコミカルのギャップから生まれているのでは?」と睨んでいるが……さて、どうだろうな。
プレイにカロリーを大量に消費するのが難点
ここまで散々褒めちぎってきたが、ここで難点を挙げる。
ずばり、プレイしていて滅茶苦茶にパワーを使うことだ。
- 戦略とビルドに頭を悩ませる
- QTEのタイミング合わせに極度に集中力を使う
- ハードなシナリオに打ちのめされる
- コミカルな場面で心が躍る
- テンションの落差で風邪をひく
と、プレイヤー自身のMPを大量に消費する。
筆者はいろいろ立て込んでいたりしんどかったりした時期にこのゲームをプレイしていたので、全エンド制覇まで四か月もかかってしまった。
システム・バトル・シナリオ全ての完成度の高さの裏返しとして、全体的に高カロリーな作品となっているので、「気軽に遊ぶ」にはちょっと重い。
フルコースはどんなに美味しくても、軽くつまむには存在自体が重すぎるのだ。
このゲームは「腰を据えて、濃いゲームをやりたい」という人にこそ、遊んで欲しい。
まとめ
ゲームブックやコマンドバトルといった古典的な要素から一歩踏み込み、「古典のその先」へと昇華した作品。
高度な戦略性に緊張感あふれるQTEで、特にボス戦に勝った時にはソウルライクのような達成感がある。
「いのち」と「選択の代償」を逃げることなく真っ向から扱うシナリオと、自然に差し込まれるコミカルな場面が大きな没入感を生んでいる。
気軽に遊ぶにはやや高カロリーではあるが、重さに見合う完成度を持つ作品だった。
というわけで、『いのちのつかいかた』の紹介でした!
第五回のIndieGame100では、作っちゃうおじさん作の『ダンジョンデストロイヤー』を取り上げる予定です。
プレイの進捗は筆者のxでハッシュタグ #IndieGame100 にて呟いていきます!
それでは、良きゲーマーライフを!!
最後まで読んでくださって、ありがとうございました!!!
前回のIndieGame100【Dungeon Antiqua】HARD裏ボス撃破までクリアした感想 IndieGame100 #3 – Kaburanai Games
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