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ゲームが全くの無から生まれるってことは、多分ないだろう。
それまでに積み上げられてきたゲームの土壌の上に、新しいゲームが生まれていく。
こうして生まれたゲームをプレイした経験自体が、ある種の物語を生んでいるのではないか。
では、その土壌のさらに上には何が?
今回のインタビュー企画『原風景、お邪魔します』では、そんなシステム主導のナラティブに一家言を持つ制作者の、MemoryPixelさんにお話を伺った。
作品紹介パートとして、同氏制作のハクスラダンジョン探索RPG『ダンジョンファンタジア』の記事も書かせて頂いた(リンク)ので、是非チェックしてみて欲しい。
じゃ、行こうか。
MemoryPixelさんのご紹介

今回のお相手:MemoyPixelさん
公式サイト
https://ci-en.net/creator/15284
制作中の作品:ハクスラダンジョン探索RPG『ダンジョンファンタジア』
α版がブラウザで無料プレイできるページ ハクスラダンジョン探索RPG『ダンジョンファンタジア』α版を遊ぶ! フリーゲームのPLiCy [プリシー]
■過去の創作活動の成果物
ハクスラアクションRPG『連撃の剣士』α版
2021年5月19日にゲームアツマールで公開
累計50,000回程プレイされた。
現在はPLiCyでプレイ可能。
▶ハクスラアクションRPG『連撃の剣士』α版プレイ
https://plicy.net/GamePlay/153154
――では、自己紹介をお願いします!!

MemoryPixel(メモリーピクセル)と申します。
RPGツクールが好きなインディーゲームの企画開発サークルとして2022年から活動しています。
『ノスタルジックなレトロ風RPG・アドベンチャー』をコンセプトに、
ハクスラダンジョンRPG『ダンジョンファンタジア』
ハクスラアクションRPG『連撃の剣士』
などを作っています。
――まずは軽い質問から!暑いのやら寒いのやらよく分からない天気が続きますが、寒暖差で体調は崩されていませんか?

ありがとうございます。今のところは大丈夫です!
――現在制作中の『ダンジョンファンタジア』は一言で言うとどんなゲームですか?

『ダンジョンファンタジア』は『冒険者の生き様』を題材に作ったハクスラダンジョンRPGです。
ゲームシステムとしては『ハクスラ x ダンジョン探索』をベースにしつつ、作品のテーマとしては「冒険者とは何か?」を考えながら創ってきました。
ターン制のバトルシステム x ダンジョンクロールと非常にシンプルなものではありますが、プレイヤーのキャラビルドやパーティー編成・行動の自由度・UIのわかりやすさを重視しながら、1つのシナリオが2〜3時間程度でクリアでき、様々な冒険を繰り返し楽しめるようメインシナリオ選択システムを独自開発し採用しています。
RPGツクールで冒険者シミュレータを作りたい
――ダンジョンファンタジアをプレイしていると、ダンジョン内でエンカウントするモンスターの種類が変わっていく場面がありました。「ダンジョン内の生態系の変化を表しているのかな?」と思いました。
このシステムを採用された意図は
・『世界観への没入感増大』
・『同じ敵と戦い続けることから来るプレイヤーの飽き防止』
・『ドロップテーブルや有効なスキルをずらすことで、先述の多様性を生むため』
であえて順位をつけるとすると、どのような順になりますか?

そうですね。本作では同一ダンジョンでも、どのような敵が出現するかはシナリオ・依頼・世界の時間経過などによって毎回変わるエンカウントシステムを独自開発しています。
本作の設計思想として『RPGツクールで冒険者シミュレータを作りたい』というのがありまして、ダンジョン1つをとってみても、ゲーム内の時間経過に基づいて、そのダンジョンに住み着くモンスターも変化するのが自然だろうという哲学があり、ゲームシステムに反映しています。

つまり、順序としては
①冒険者としての世界観への没入感増大
②同じ敵と戦い続けることから来るプレイヤーの飽き防止のゲームシステム
③ドロップテーブルや有効なスキルをずらすことで、ビルドの多様性を生む
ために『ダンジョン内の生態系変化システム』が必要といった考えです。
自由度を生むためのシステムとは?
シナリオ分割方式による冒険の自由
――ダンジョンファンタジアでは、シナリオ分割方式を採用されています。最終的に、何個くらいのシナリオとプレイ時間になる予定なのでしょうか?

現時点ではストーリーとしては、6個のメインシナリオで最終エンディングとなるように考えています。プレイヤーさんの成長度合いにもよりますが、1シナリオのプレイは2〜3時間程度で考えていますので、平均的な想定では合計20時間前後かなと見込んでいます。

とは言っても、冒険者の終わりはプレイヤーが自分で決めるわけですから、シナリオ6までやらなければエンディングというわけでもなく、シナリオ1やシナリオ2だけクリアしてエンディングとするのもよいと思っています。(そのため、毎回エンディングロールが表示されるようになっています)

メインシナリオをクリアする数が増えるほど本作の世界観の理解が深まりますが、どこを冒険者としてのエンディングにするのかは基本的にプレイヤーさんの自由です。
補足として、本作はシナリオ選択システムを独自開発しており、各シナリオは完全に独立したものになっています。これは87年に発売されたソーサリアンという作品の影響を受けています。あとからのシナリオ追加は比較的やりやすいゲームシステム設計なので、プレイヤーさんからの反響や希望、開発に余裕があれば、外伝的なシナリオや各キャラクターの深掘りをするような追加シナリオなども作れる機会があればいいなとは思っています。
シナリオ選択システムの導入によって短編にも長編にも対応できるので、個人的にはとても気に入っています。
装備によるキャラクタービルドの自由
――ダンジョンファンタジアでは、修正値の高いアイテムやユニークアイテムを拾うと一気に戦力がジャンプアップして、無双感を味わえました。反面、キャラクターレベルによる戦力上昇はHP以外はかなり抑えめな印象です。
これは、装備収集を主要な強化要素とするための調整でしょうか?

これは、冒険者としての「自由なキャラクタービルドを実現する」ためです。
たとえば、RPGでよくあるシステムではクラス制(職業制)があります。これは各職業ごとにステータス成長率が異なっていたり、スキルの習得可否が決まっていたりするわけですが、冒険者というものを考えた時、クラス制では表現しづらいキャラクターもいることがあります。

そのため、ベースとなるステータスは原則共通(見た目・性差・職業等による違いはなくす)ようにし、各ステータスのうち、どれを伸ばすかはステータスアップアイテムによるものとし、スキル習得も個数制限を除けば、自由にできるようにしています。
開発者がこのキャラやこの職業はこう成長すると定義された世界をプレイするのではなく、プレイヤー自身が自分が創ったこの冒険者は、こういう特徴(見た目・名前・ステータス・スキル)を持った冒険者なのだという体験を創れるようにしています。
また、ユニークアイテムを拾うと一気に戦力がジャンプアップして、無双感が味わえるのは、ハクスラですから、バトルシステムが提供するべきは「爽快感」なので、ユニーク入手前と入手後では一気に逆転する体験にしています。

つまり「新人冒険者としての厳しさ」vs「その中で生き残った冒険者としての経験」の対比変化であり、その転換点となるのが「ユニーク装備品の入手」であり、ユニーク装備品は「未踏破ダンジョンという過酷な環境の中にある」という流れになっています。
レトロRPGから受け継ぐものとズラすもの
――特に序盤の難易度や画面デザインから、レトロなRPGへのリスペクトを感じます。
同時に、食糧や配達依頼のような生活要素や使いやすいUIなど、新しいRPGへの志向も垣間見えます。
MemoryPixelさんが、本作において『レトロRPGから受け継ごうと決めているもの』と『レトロRPGから敢えてズラそうと決めているもの』は何でしょうか?

『レトロRPGから受け継ごうと決めているもの』は雰囲気やUIなどの情報設計やアートワークです。これは90年代のスーパーファミコンライクなドット絵2Dゲームが好きという個人的嗜好もそうですが、ゲーム開発者としてみた時、90年代ゲーム機のこれらの表現技法には様々なメリットがあるためです。

対して『レトロRPGから敢えてズラそうと決めているもの』はゲームシステムです。
レトロRPGの進行管理はいわゆるストーリードリブンのJRPG型のものが多いと思いますが、私は開発者が作ったストーリーをそのままプレイヤーに追体験してもらうようなRPGにしようとは考えていません。RPGツクールや2DRPGで、冒険者としてのナラティブな体験ができるゲームシステムを追求しています。

本作にもゲーム進行管理としてストーリー要素を使ってはいますが、ストーリーはあくまで「プレイガイド」としての位置づけであり、クリアの必須条件は非常に緩いものです。そのため、ストーリーに従わずに他のダンジョンを探索してみたりするのもプレイヤーさんの自由です。

実際、テストプレイで様々なプレイヤーさんのプレイを見てみても十人十色で、メインシナリオは全く進めずに本筋とは全く違うダンジョンを探索し、その探索でたまたまユニークアイテムをみつけ強くなったプレイヤーさんもいますし、直行直帰で目的のダンジョンに行って最短クリアするRTA型、シナリオを複数回繰り返す周回プレイをする方もいらっしゃいました。
冒険者を雇いパーティーに仲間を加える方もいれば、無料ならパーティーメンバーを増やす方、パーティーを作らず完全にソロでクリアする方もいます。
RPGにおけるプレイヤーのプレイスタイルは人それぞれなので、プレイヤーさん自身にあった形で冒険者生活を楽しんでもらえればいいなと思っています。
食糧や配達依頼のような生活要素は、冒険者としての生活を体験してもらうために入れていましたが、テストプレイを見ると、ダンジョンに潜るより、ひたすら配達依頼をこなすプレイヤーさんもいて、本当にさまざまな冒険者生活が垣間見れて楽しかったです。
90年代のゲーム機特有の表現技法のメリットとは?
――『90年代ゲーム機の表現技法は開発者にメリットがある』とのことですが、例を伺ってもよろしいでしょうか?

ゲームというのは複数のレイヤーで構成されています。
その最上位層にあるのが、プレイヤーが直接見聞きするアートワーク(グラフィック・音源アセット)の層です。

一般的に、ゲーム開発においてアセット制作は非常に開発コストのかかる部分です。
特にグラフィックは手間がかかり、グラフィックのことを考えるだけでもいくつかの観点があります。
・2D・3D表現どちらを使うか?
3D表現を採用した場合、カメラワークやプレイヤー操作ボタン、習得難易度が変わる。
・アセットの解像度はどれくらい必要か?
解像度を高くすると、それだけ多くの情報量、密度が求められる。
・色数やトーン&マナーをどうするか?
アーティストとして独自の世界観を表現するには重要ですが、アートワークがゲームのコンセプトではない作品の場合、制作コストに見合うものになるのかはよく検討する必要があります。
・顔グラフィックは表示するべきか否か?
ツクール標準では顔グラフィックが使われていますが、画面に占める面積量が多く顔グラフィックはキャライメージを固定化します。プレイヤーの好みに合うものであればそうでない場合はマイナスに働くこともあります。
・立ち絵が必要か?
・立ち絵を導入する場合、ポーズパターン、表情パターンは何種用意するのか?
これらを一度考えればいいのではなく「キャラ数分必要」になります。

シナリオが増えれば当然キャラ数は増加してくるため、アセットの開発コストというのは指数関数的に増加していきます。
90年代、商業レベルのゲームが少人数で半年〜1年程度で開発ができたのは、アセットの開発コストが現在と比べれば低かったのではないかと推察しています。

そういう歴史や開発プロセス、ゲームプロダクトしてのクオリティをふまえ、グラフィックレイヤーとしてどのような要件にするのがいいのか考えてみると、
①多くの人が知っていること
②開発コストが低いこと
が重要であると思っています。

ファミコン・スーパーファミコン・ゲームボーイアドバンスなどの1980年代半ば〜2000年前半はドット絵が主流でしたし、子供の頃それらのゲームに親しんだ私のような世代は一種の懐かしさとピクセルアートならではの表現を好んでいます。
これらのドット絵表現はRPGツクールとも非常に相性がよく、
・レトロ風なので、2D見下ろし型。なので操作が簡単&わかりやすい。
・レトロ風なので、どっかでみたことがあるファミコンやスーパーファミコンっぽさの馴染みがある。
・レトロ風なので、アセットの解像度は低くていい。むしろ高すぎると世界観を壊す。
・レトロ風なので、メッセージの行数を4行ではなく3行にすることで、一度に目に入ってくる情報量が少ない。
ぱっとみただけである程度理解できる。
開発者も文字数制限があるので、セリフを吟味するようになり、情報の取捨選択をすることで情報密度が高まる。
・レトロ風なので、過剰な戦闘エフェクトや演出を作らなくていい。
プレイヤー視点でもバトルのテンポが良くなる。
・レトロ風なので、ボイスはいらない。キャライメージを固定化しプレイヤーの想像を阻害する場合になることがある。
・レトロ風なので、すべての情報を表現しない。プレイヤーの想像の余地を残す。
等など、多くの人に興味を持ってもらいやすく、少ないからこそクオリティや密度を上げられ、開発コストも下げられるのだと思っています。

本作でも顔グラフィックは使用せず歩行グラフィックで代替しています。
そのため、キャラを増やしても、立ち絵を用意する必要も表情差分を用意する必要もありません。
ゲームとして必須となる歩行グラフィック一つあれば、キャラを増やすことができます。
このように、ちょっとしたアイデアやシナリオを思いついた時、アセット開発に工数を割きたくないわけです。
そこに工数を使うなら、コンセプト・モチーフ・ゲーム体験・ゲームルール・ゲームシステム・プレイヤーの自由度といったゲームとしての本質部分を徹底的に磨きたい気持ちが私は強いです。

80年代のコンピューターの少資源環境でも、面白いゲームはたくさんありました。
アセットや情報量が多いから、必ずしも面白くなるわけではないのだと思っています。
私はアセット開発をしているわけではなくRPGゲーム開発をしているので、このダンジョンファンタジアというゲームならではの面白さや独自性、わかりやすさ、プレイヤーには見えないけれども、ゲームアーキテクチャやコードの安定性・拡張性・保守性のバランスを考慮したRPGシステム環境を作りたいのだと思っています。
忘れられないゲーム三つ
忘れられないゲーム三つと、未だに忘れられないエピソードを教えてください!!
ルナティックドーン 前途への道標

ルナティックドーン 前途への道標については90年代の作品ですが、こういう体験を2026年の環境でも、わかりやすく、もっと簡単にプレイしたいという動機で本作の開発が始まっています。当時プレイし、冒険者として自由に冒険する楽しさを教えてくれた作品の一つとして、あれから30年経ってもずっと印象に残っている作品です。
Amazonでルナティックドーン 前途への道標がどんなゲームか見る
ロマンシング サ・ガ

ロマンシング サ・ガについては、スーパーファミコンというコンシューマ機でフリーシナリオシステムを実現したパイオニア的な作品です。進行管理が戦闘回数という点から敵も強く、フリーシナリオシステムの採用という、RPGの難易度で言えばシビアな部類に入るものだと思いますが、その分、プレイヤーが自由に冒険できるというのは大きな魅力だと思っています。
英雄伝説Ⅲ 白き魔女

対して、英雄伝説Ⅲ〜白き魔女〜はゲームとしてはストーリードリブンのJRPGなのですが、世界観や作品のテーマ性がとても好きです。なかでもエンディングの「デュルゼルの手紙」は非常に感動的で、RPGをプレイして初めて感動して泣いた作品としてずっと記憶に残っています。
目指したのはメカニクスからナラティブを生むこと
――「忘れられないゲーム三つ」がいずれも「冒険のナラティブを追体験する」ことに特化したゲームで、ハクスラとはちょっとジャンルが違うゲームな印象です。ダンジョンファンタジアに、これらの作品群に無いハクスラ要素を入れた理由を伺ってもよろしいでしょうか?

これはむしろ逆で、私がRPGをRPGツクールで作ろうとはじめに思った時、ハクスラ以外のゲームシステムは考えていませんでした。
RPGメカニクスとしてみたとき、ハクスラのゲームメカニクスは非常に強力であり、強力すぎるほどです。
なので、ハクスラ以外のRPGを作ろうとは考えていませんでした。

ハクスラをベースにした上で、ハクスラだけにすると本当に「戦闘と成長」というRPGの大前提のゲームルールしかなくなってしまいます。

なので、私が好きな「冒険者」というものをモチーフに、冒険者として生きる世界の仮想体験みたいにすれば、プレイヤーが自分自身で作った物語体験になるのではないかと思っているわけです。

過酷な状況の中でプレイヤーなりに創意工夫をし目的を達成する。はじめは難しかったけど、続けていたらある時(それは運かもしれませんが)強くなり、小さな成功体験を得る。誰かが決めたレールではなく、自分で状況を見て、様々な制約の中で意思決定をし試してみる。
そういう体験はきっと、単にゲームをプレイしただけではなく、その人の経験として何か残る可能性があるのではないかと思って作っています。
体験やシナリオを作るということにおいては、必ず「入口と出口を作ること」が求められます。
そう考えると、ダンジョンファンタジアは、入口がわかりやすいレトロ風&ハクスラであり、出口はプレイヤーが自ら意思決定をし成功体験を得ること。
そして、ダンジョンファンタジアという作品のテーマ性を少しでも感じてもらえるようにできればと思って作ってます。
プレイヤーが生むナラティブ
今作で目指している、プレイヤー主導のナラティブとは「良かれと思って雇った仲間をうっかり死なせてしまい、蘇生費用稼ぎに奔走する」(紹介記事リンク)ようなエピソードのことでしょうか?

おっしゃるとおりです!どんな名前や見た目の冒険者を登録して、何をやろうと思って、どうなって、どんな事が起こって、結果どうなったか。どう乗り越えていったか。それら文脈の蓄積がその冒険者の物語体験になると思っています。

本作が参考にしているルナティックドーンでは、プレイヤーさんが冒険記をたくさん作っていて、冒険記がプレイヤーの唯一無二の体験であり、独自の思い出になっていきます。

キャラクターのバックグラウンドが描かれていたり、セリフや掛け合いの情景が描かれていたり。これがコンテンツを生み出すプレイヤーさんの創造力なのだと思っています。

『プレイヤーがプレイで終わるのではなく、新たなコンテンツの作り手になる』
という部分が、1人でプレイするコンピュータRPGとしてのルナティックドーンシステムの凄さのような気がしていまして、私もゲームプレイがコンテンツを生むようなゲームを作りたい。そういう『いろんな冒険者さんの冒険の思い出(リプレイ)が読みたい』と思って、ダンジョンファンタジアを作っています。(そのためにできる体験や必要となる機能はまだまだ少ないのですが)

本作の開発にあたり、90年代TRPGの資料を大量に買いました。私自身はTRPGは未プレイですが、シンプルなルールの中にGMさんやプレイヤーさんによるセッションで物語(リプレイ)が生成されていくことに強い興味をもったためです。このような体験を「コンピューターRPGで一人で、より簡単にできるようにする」のが私が作りたいRPGシステム環境です。

実は、ダンジョンファンタジア開発初期バージョンではプレイログ機能(何年何月何日に何をした)みたいな機能も作成しているのですが、α版はブラウザプレイということもありセーブデータ肥大化になるため、なくなくこの機能の採用は見送った経緯があります。
現状はメインシナリオ実装に手一杯なのですが、開発の余裕があれば、様々な冒険者体験ができる機能やイベントは追加していければなとは考えています。
現在はα版であり、どこまでダンジョンファンジアを作り込むか、もしくは次作とするかはα版をプレイしたプレイヤーさんのフィードバックによるところが非常に大きい状況です。
ぜひ、テストレポートでご感想やフィードバックなどを頂けましたらありがたいです。
初期案から大きく変わった要素は?
ゲーム制作をなさるうえで、バーティカルスライスを作ったうえでのテストを重視なさっています。そうしたテストを通して、『初期案から大きく変わった要素』は何がありましたか?

私はα版(バーティカルスライス)を公開して、実際にプレイヤーさんにプレイをしてもらうことは、非常に重要な開発工程だと認識しています。
2026/5/19のアルファ版公開後、プレイヤーさん達から様々なフィードバックを頂き、ほぼ毎日更新してきましたし、修正を急いだほうがいいものは1日に2度アップデートすることもあります。

『初期案から大きく変わった要素』については、コアループ・ゲームループの仮説が正常に動作するかどうかをチェックするのがα版の意義だと考えており、コアループ・ゲームループに関して問題はないということがわかったので大きな変更はありません。

また、オープンテストを行うα版ではゲームアーキテクチャとしてはほぼ完成品に近く、αとはいえ、プレイヤーさんが実際に何時間、何十時間もプレイしてセーブデータを持っている状況になると、ゲームシステムとしては大きな変更は非常にやりづらくなりますので、α版リリース前の段階でゲームとしての下位レイヤー部分はしっかり設計し、α版公開後に実際にプレイしてもらい、細部の調整や不具合修正、開発者視点では気づかなかったことの改善をし続けていくだけです。
ハクスラに求められるものは?
――「ハクスラにプレイヤーは何を期待し、それに対してゲームはどんな体験を提供すべきか?」という部分から逆算して、かなり割り切って作っていらっしゃる印象を受けました。こうした制作スタンスは初めてゲーム作りをなさったときから一貫していますか?それとも、制作経験を積む中で育まれたスタンスなのでしょうか?

これは私自身がディアブロに代表されるゲームのハクスラプレイヤーであったことと、2021年に公開したハクスラアクションRPG「連撃の剣士」を数年運用してみて、プレイヤーさんから頂いた感想やフィードバックによるところが非常に大きいです。

ハクスラのようなランダムドロップシステムを調整もなくそのままゲームシステムに実装した場合、確率ですから、いくら時間をかけてもどうしても手に入らない人も出てくるわけです。それは手に入れた人は嬉しい反面、プレイヤーの人数が増えれば増えるほど、頑張っても報われない人も同時に生まれることになります。
なので、連撃の剣士で調整したことを踏まえたり、今作ではドロップシステムはゲームルールレベルでこういう問題が起こりづらいように設計しています。
プレイヤーの自由度を担保するためのドロップシステム
――ドロップシステムにどのような工夫を取り入れられたのか、お答えできる範囲で教えてください!!

ハクスラにおけるドロップの瞬間というのは、大きく
1.敵を倒した時
2.ダンジョン内で宝箱をあけた時
の2つかと思いますが、この2つだけだとなかなかバランス調整がしづらくなります。
そのため、ダンジョンファンタジアではメインシナリオクリア報酬としてユニーク確定報酬をお渡しするようにしています。
つまり、
3.メインシナリオをクリアした時
が追加されていまして、1,2はプレイヤーの通常プレイのリアル運に左右されますが、3は種類はランダムですが確実にユニークがもらえるようになっています。その上で、ダンジョン探索中にユニークが手に入る機会があるわけです。

また、ユニーク確定宝箱開封前はセーブもできるので、いわゆる”厳選・リセマラ”もしやすい仕様にしています。
セーブ&ロードの厳選をするかどうかは各プレイヤーさんの判断に任せています。
本作において「セーブ&ロードを使うか使わないか・どう使うか」は原則、プレイヤーさんの自由にしていますが、これは、このゲームの難易度をプレイヤーさん自身が自由に調整できるということでもあります。

緊張感やユニーク入手の高揚感を望む方、何が起こるかわからない体験を望む方は、ロードをなるべく使わないようにすればいいですし、着実に積み上げていきたいという方やあまりゲームプレイする時間がなくて…という方はロードを積極的に使うのもよいと思います。
どのようなプレイスタイルにせよ、それがプレイヤーさんの冒険者物語であればいいと考えています。
独自対策プラグインでハクスラを実現
――ちょっと技術的な話題なのですが、修正値付きの装備品ってRPGツクールでデータベースを作るのが、バランス取りの面でも入力面でもかなりしんどくはないですか?(「修正値1につき攻撃力+1」のような汎用ルールが作れず、一個一個をデータベース登録しなければならないためです。)
そのあたりでどのような対策をなさっているか、伺ってもよろしいでしょうか?

修正値付きの装備品は、ハクスラにおいて非常に重要な要素の一つですが、仰るとおりRPGツクールではデータ作成の開発コストは非常に高くなります。ハクスラなので、本来であればランダムエンチャント機能を使えればいいのですが、RPGツクールのコアスクリプトの仕様上、ツクールでランダムエンチャントを実装するのは非常に困難な道になります。

そのため、本作では静的データとして修正値付きアイテムを大量作成しているわけですが、開発初期段階において武器防具データの作成は大きな問題になりました。そこで独自にデータ生成プラグインを開発し武器防具データを量産できるようにすることにしました。

具体的に言うと、ベースアイテム(ショートソード、ロングソード)等を作り、プラグインコマンドを実行すると、修正値が異なるベースアイテム10種が自動生成されるようになっています。つまり、10種ほどのベースアイテムさえつくっておけば、100個の武器防具データは自動的につくれるので、このシステムを導入してからは、データ作成面での課題はだいぶ解決できました。

しかし、ご指摘の通りバランス取りの面ではどうしても大味の仕様になってしまいますので、N品・R品の修正値部分での厳密なバランス調整にはそれほどこだわらないようにしています。
最終目的は「最上位のユニークアイテムを入手すること」になるからです。
スクラップ&ビルドを高速で回して制作する
――製作途中で起こったエピソードなどはありますか?

ダンジョンファンタジアは2025年7月から制作を開始し1年ほどになりました。
2025年中は主にゲームシステムの基盤開発を行いながら、オープニングからエンディングまで通しプレイができるものを作っていたのですが、これでは「プレイも完成させるのも難しい」ということが判明し、それまで作っていたものを一度すべて壊し新たにゼロから再設計をしたものが本作になります。
今作の開発をするまで気づかなかったのですが、ゲーム開発というのは「壊すことも創るうち」のような気がしています。

それまで積み上げてきたものを壊すのはとても勇気がいることで心理的な葛藤も大きいのですが、ある時点でこの方法ではダメだと思ったら、一度すべてを壊し新たに組み直すことでより良くなっていくような気がしています。
大規模なチーム開発でスクラップ&ビルドを行うのはとても難しいことだと思いますが、インディーや小規模開発ならではの小回りの利きやすさは「壊して再設計する」のも比較的やりやすく、それができるのもインディー開発の強みなのかなと強く感じています。

様々な要素を増やして試す段階と増えた要素を間引く段階。
足し算だけでなく、引き算で作っていく段階があることで洗練されていきますし、密度も上がっていくような気がしています。
読者へのメッセージ
――最後に、読者の方へメッセージをお願いします!!

本作は、プレイヤーの自由度を重視して作ったハクスラダンジョン探索RPGです。
様々なキャラビルドやパーティー編成・冒険・戦い方ができるようなゲームシステムですので、レベルや装備をあげてコツコツ攻略するもよし、アイテムを組み合わせて攻略するもよし、どのように依頼遂行をするかはプレイヤーさんの冒険者としての判断にかかっています。
原則セーブはどこでもできますから、着実に進めたい方はセーブをこまめに、ちょっとハラハラ・ドキドキを楽しみたい方は、セーブ&ロードを使わないプレイをすると緊張感のあるプレイが楽しめます。
プレイヤーさんそれぞれにあった難易度で自由に『サクッと楽しめる冒険者の体験』を楽しんで頂けたら嬉しいです。

また、現時点ではα版での公開となりますが、完成に向けて日々開発を行っています。
α版公開中にテストプレイ報告を頂けると開発の参考になりますし、エンディングクレジットにテストプレイヤーとしてお名前を記載させて頂きますので、ご感想やフィードバック、不具合報告なども頂けると大変助かります。
▶ダンジョンファンタジアテストプレイ報告フォーム
https://forms.gle/sMmQFcVsCjxvuVqQ8
前回のインタビュー:原風景、お邪魔します#5 KisekiKobo Gamesさんにインタビュー ~作者である前に読者~ – Kaburanai Games
