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並々ならぬ執念の漏れ出すゲームには、既存作品への狂気に片足をつっこんだ愛がある。
インタビュー企画『原風景、お邪魔します』では、そうしたゲーム制作者さんの根っこの部分に、ほんのりお邪魔させてもらう。
- 自分が何を好きなのか分からなくなった創作者
- 開発の裏側が気になる人
には示唆に富む内容だと思う。
今回は、リリース前の作品に「このゲームを語っても……イイネ!」な空気を作りに行く企画『リリース前語り』のインタビューパートも兼ねて、黒木道仁さんにお話を伺った。
感謝ッッ!!!!
『リリース前語り』の作品紹介パートとして、同氏制作の『Ambitious Road』の紹介記事も書いている。
こちらも是非チェックしてみて欲しい。
なお、今回のインタビューでは葛飾六斎さんのSRPGStudio開発者による座談会記事を大いに参考にさせて頂いた。
改めて感謝をさせて頂きたい。
黒木道仁さんのご紹介

今回のお相手:黒木道仁さん
――自己紹介をお願いいたします!!

黒木道仁です。
SRPG Studioというゲームエンジンを用いて『Ambitious Road』というFEライクな作品を作ってます。Steamにて有償配布予定です。
SRPG studio自体はリリース時から触れてましたが、本格的に完成させて公開するのは初めてです。
――では、軽いジャブを打ちます!制作の時によく聞く音楽はなんでしょう?

ゲームのBGMなどいろいろですが一番聞くのが多いジャンルはユーロビートだと思います。
実は幼少期から頭文字Dが好きなので、あの作品で使われてたユーロビートは頻繁に聴いてますね。やはりハイペースなビートでテンションが上がるからだと思います笑
ファイアーエムブレムライクな作品を目指した
――Ambitious Roadは一言で言うとどんなゲームですか?

一言かは微妙ですが…ズバリ「ダークヒーローを操作するFEライクなSRPG」ですね。
FEシリーズのみならず多くのSRPGの主人公はほとんどが聖人君子あるいは義に厚いナイスガイばかり(大手なので当たり前)ですが、私の作品の主人公ミッシェルは、立身出世を志し欲望に忠実、プレイボーイです。
戦争で活躍し英雄として台頭することを夢見る青年として描写してます。
――葛飾六斎さんの座談会から、FEシリーズの大ファンであることがビシビシ伝わってきます。そこで、好きだからこそ既存作品に物足りなさを感じていたところはありましたか?
もしあるなら、それはどんなところですか?
もしないなら、今作で新たに作ろうと思ったことは何ですか?
物足りなさについては特段感じてません。
自分にとってはFEシリーズは絶対的な存在なので、あるものを受け入れるというスタンスで各作品遊んでます。
それはずっと変わらない気持ちですし、今もファンとして最新作を心待ちにしてます。
転機となったのは生成AI技術が発達した辺りです。あれによりキャラの立ち絵やBGMの生成やれることも格段に増えました。
そして実際に昨年はAI技術をふんだんに活用したSRPG studio作品も多く出ました。

みんなこのように最新技術を活用して勝負してるなら俺もやってみるかと思い、私の好みを全面に押し出した私の私による私に最も最適化されたSRPGを作ってみようと思ったのが本作のコンセプトです。
その好みというのが、野心的で大胆でスタイリッシュに振る舞うダークヒーローチックな主人公像です。ミッシェルのベースとなっているキャラクターや人物は大勢いて、マンガ・アニメ・ゲームで言うならコードギアスのルルーシュ、デスノートの夜神月、銀英伝のラインハルト、Zガンダムのジェリド・メサなど。
史実のモデルはカエサルやナポレオン・ボナパルトですね。
このような野心家を主人公としてる作品はFEシリーズのみならず、インディーでも珍しいかあるいは私の観測してる限り見かけないです(FEシリーズは風花雪月のクロードやエーデルガルトがそれにあたるかも?)。
なら、この俺が作るしかない!と思い至ったのがこの作品で新たにやろうとしたことです。
――クラシカルな軍記物のイメージとは違い、かなり尖った性格や口調のキャラが多くいますが、王道の軍記物から軸をズラして表現することに迷いはありましたか?
それとも、スパッと思い切って表現なさったのでしょうか?

これについても迷いは無かったです。
何故かというと、これも実は近年の本家FEシリーズが戦記物らしからぬあらゆるバリエーションのキャラを実装しているからです。
例えば一番新しいFEエンゲージのクラン&フランという双子の兄妹キャラは主人公リュールをアイドルにみたてその推し活をしてるようなキャラとして描かれてます。
だから、現代的なギャルっぽい女の子を出すことにも躊躇はありませんでした。
口調についても表現を現代基準に合わせてるだけで、おそらく古今東西の若者もそれぞれの時代で崩した口調してるんじゃないかな?みたいな風に捉えてます。
キャラクター造形の舞台裏
FEという偉大な教科書
――40人以上のユニットのデザインや性格を、区別のつくものにするのはかなり大変なのではないかと思います。制作にあたって、キャラクターの造形はどのような順序で作り込んでいかれましたか?

これもまた、FEシリーズという偉大な教科書から得たものです。
FEシリーズは毎作お決まりの「ポジション」として他の作品にもこんなキャラいたな…となるキャラ造形をしてることが多いです。
例えば最初は強いけど成長率が悪く段々若手に抜かれてく老騎士の「ジェイガン」とかヒロインの説得で仲間になるクールなロン毛のイケメン剣士とかそんな感じです。
なので全て反映はしてませんが私もサブキャラはそういったFEシリーズ伝統のポジションを基礎としてキャラ造形を固めつつ、コアとなるメインキャラなどは私の中で譲れない属性や性格づけをしていった感じですね。
特にタイトル画面にいる4人のキャラクターについては、この4人を軸として動かすことを念頭に置いてシナリオ執筆をしていましたし、周りのキャラクター達もこの4人に負けないくらいの魅力を込めるようにしましたね。
――多数加入する自軍ユニットが、キャラクター性だけでなく成長率やスキルで明確に差別化されているのが魅力的だと思いました。個人的に、私の推しはサラーフちゃんです。
ストイックな所も勿論好きですが、「攻撃力が低い代わりに、相手に行動不能のデバフを付与できる、騎馬弓兵」という盤面制圧力が好きです。
こうしたユニットごとの性能面での特徴も、FEシリーズをリスペクトしたものでしょうか?

サラーフのモデルは実際にいます!
FE封印の剣のスーというキャラクターがそうです。
スタンショットを持たせた理由は1章で仲間になるレナーティアとの差別化ですね。 レナーティアはバランス型のスペックですが、サラーフはご指摘の通り攻撃力控えめのスピードタイプとして設計されており、この特徴はスーとも一致します。
ただ、そうなると火力面での頼りなさが出てくるのでどう差別化しようと悩んだ結果が、強めのデバフ持ちというキャラクターでした。これはFEシリーズにもあまりいないと思います。
確率40%で高確率とはいえ不確定なのでバランスブレイカーにはならないかな?といった塩梅になってるかも思います。
完全にオリジナルのキャラクターというのは恐らくいないと思われます。武器の組み合わせなどでFEに無いようなキャラクターも居るかもしれませんが、どのキャラも運用についてはFEシリーズや他のSRPGStudio作品に触れていればそこまで苦心するような感じではないかなと思います。
主人公ミッシェルの描写意図
――実を言うと、プレイ前は主人公ミッシェルのことを、「傲岸不遜な自信家」キャラだと思っていました。それが、プレイするうちに、父親の前では口調が緩んだり、目下の人にも敬意を示せるキャラだと分かって好感度が上がりました。
仲間内での評価は高いものの、身内の外の人物からは実力を下に見られるなど、妙な泥臭さもあります。
彼の人物像やストーリー上での扱われ方について、「これは絶対にやろう」と思ったことと、逆に「これは絶対にやめよう」と思ったことはなんでしたか?

ここに注目してくれたのは非常に嬉しいですね。
そう、確かにミッシェルは冒頭のモノローグにもある通りの傲岸不遜さはあります。
しかし一方で、作中のキャラに言及されてた通り平民としては比較的裕福な部類にも入る、田舎の坊ちゃんとして育った育ちの良さみたいなのがあるキャラなのです。
これはあるキャラとの対比構造になってますね。
また、将校として一番大事なものが一般の兵士であることも信念の一つとして持っており、自分の命令一つで死ぬ存在なんだということをしっかり認識してると思います。
確か『孫子』の兵法だったかと思いますが、兵士を赤児のように愛せよ、ただし規律を緩めてはいけないみたいな教えがありまして、そういうのを自然と実践できる男だというのを描写しようとした結果がああいったキャラ造形なんだと思います。

ミッシェルを描写する上でやめようと思ったのはとにかく周りをイエスマンばかりにしないということです。
これは彼を煙たがる貴族もそうですし、自軍のキャラの中にも彼を嫌う人物が数名います。
彼にとっての困難は戦場だけではないということや、自分を嫌う人物すらもねじ伏せることができてこそ本物の将帥なんだということを示したかったのです。
だから結構やりすぎなくらいミッシェルに反感を持つキャラが出ますね。
そしてこういう状況だからこそ、ミッシェルのことを全肯定してくれてかつスペック爆盛りなヒロインのエリーザやパトロンになってくれる宰相のジェラールみたいなある種都合のいいキャラクターも遠慮なく出せる訳です。

ヒロイン絡みに関しては実は裏のテーマがあります。
一言では表現しづらいのですが、それはどんな立場になっても男は女性の魅力や逞しさには勝てない、みたいな感じですかね?
公の場ではカッコよく、英雄のように振る舞う将帥すらも女性という存在はコントロールできない、むしろ翻弄されることもある。史実でも全ての英雄がスタイリッシュなプレイボーイとして振る舞えてる訳ではなく、むしろ女性が絡むとカッコ悪いエピソードのある偉人も多いです(ナポレオンもまさにそう)。
そして、私が参考にした創作物の主人公たちもスタイリッシュに高慢に振る舞いつつも、ベクトルは違えどそういうどこか可愛げがあるキャラクターばかりですし、そういうのがないとただいけ好かない奴にしかならないなという考えがありました。
忘れられないゲーム三選
――忘れられないゲーム三つについて、忘れられない理由とともに教えてください!!

全部FEシリーズで申し訳ありません😅
ファイアーエムブレム 新暗黒竜と光の剣

私のFEデビュー作でございます。
スマブラXをきっかけに小6の時に友達に貸してもらいました。カミュやミネルバ・ミシェイル兄妹、ペガサス三姉妹の強さ美しさに脳を焼かれました。遊戯王が好きだったので竜騎士とかパラディンみたいな単語も刺さったのでしょう。
この作品をきっかけに暁の女神や当時VC(バーチャルコンソール)で配信されていたSFCのFEを全て買い漁り、全部やりました(GBAも同様に)。世間的には不評とされてるようですが私にとっては絶対外せない一作です。
ファイアーエムブレム 暁の女神

そしてその新暗黒竜をプレイした後にその熱が冷めやらぬまま選んだのが当時まだ新しかった暁の女神です。本当は蒼炎からやるべきだったんですが、まだ幼かったのでそういうところまで考えが及びませんでした。
しかし、ダイナミックでリアル感のある(ここ重要!)戦争や政治の描写、キャラのカッコよさ、派手なゲームバランスなど、とにかく幼い私にはめちゃくちゃ刺さりました。漆黒の騎士も大好きでしたね。
この暁の女神も新暗黒竜同様あまり評価が高くないのですが、決して逆張りしてる訳ではありません。
たまたま本当に好きなのがこの作品たちなのです。
恐らく暁の女神の評価が低いのは前作蒼炎の軌跡との話の繋がりや伏線の回収を期待されてた裏返しからなのかなと思ってます。
そういう意味では蒼炎を遊ばずにいきなり遊んだことで暁の女神のいいところだけを味わえたのかなと思ってます。
もちろん蒼炎を遊んだ今でも暁の女神への思いは変わりませんがね!
ファイアーエムブレム 風花雪月

これはFEの中でも最高傑作だと思う作品ですね。単なるクオリティだけじゃなく社会に与えた影響力なども鑑みてそう判断しました。
暁の女神、新暗黒竜以降のFEシリーズは新規層開拓のためどちらかといえばライトな作風のストーリーやキャラ描写が多かったです。
もちろんそこも含め全て愛してますしキャラ造形にも影響を受けているのは前述した通りですが、ストーリーで脳を焼かれるような体験ができたのは、暁の女神以前の作品の方が多かったです(SFCの聖戦の系譜など)。
そんな中switch向けの最新作としてリリースされたのが風花雪月でした。
魅力はもう散々語り尽くされてるので割愛しますが、何が一番衝撃だったかというとそれまでFEシリーズ全く興味ない、俺には合わないと言っていた友人が気になって手に取り、めっちゃハマったと言ってくれたことが衝撃でした。
ハリポタ世代なので、あんな感じでクラスで別れ学友同士が対立するという設定が刺さったと言ってました。
そういった意味で今までのFEシリーズとは一線を画する作品だ!と思ったことが忘れられない作品となった理由ですね。
俺を狂わせた二つの作品
――ゲーム以外で「俺を狂わせた作品」二つについて、今作に取り入れたかった要素と、今作であえて別物にした要素を語ってください。
銀河英雄伝説

取り入れたものはリアル感のある軍隊や政治描写、群像劇、耽美で魅力的な男性キャラ描写ですね。特にかっこいい、魅力的とされるような男性キャラ像についてはほぼ全て描写されてると言っても過言ではありません。私のみならず多くの戦記物愛好家を狂わせた傑作ですね。
別物にした点は女性キャラを大量に出したことです。魅力的な女性キャラがいないわけではなく、むしろ描かれてる範囲では魅力的なキャラばかりなのですが、絶対数だと銀英伝の女性キャラは少ないです。
SRPGというジャンルには強く美しい女性キャラは欠かせませんし、ミッシェルを取り巻く女性達のストーリーも本作の軸となりますのでここは銀英伝とは大きく違う点だと思います。
ナポレオン獅子の時代/覇道進撃

長谷川哲也先生によるナポレオン・ボナパルトの生涯を描いた傑作ですね。この漫画を通じてナポレオンの時代の歴史を好むようになりました。
なので、この作品の要素を取り込んだというよりもナポレオンの生涯をこの作品を通じて私の作品に取り入れたという感じです。
同じように2023年に公開されたリドリー・スコット監督作品の『ナポレオン』からも強い影響を受けてます、こちらはより男女の愛憎劇の趣が強く、拙作の恋愛要素に影響を受けてます。
取り入れ無かった点は、こちらもやはり元がかなり漢臭い作風なのですがうちはそういった要素薄めになってる所ですね。
中世近世風のリアルよりとは言ってもオリジナル創作なので、魅力的と感じたら性別の垣根なく活躍させたいという想いは強いです。
黒木道仁さんの野心
――今作をプレイして、タイトルの「Ambitious」は主人公ミッシェルの野望だけでなく、黒木さんの「今までにないSRPGを作る」という”野心”を感じました。黒木さんの今後の野心を聞かせて頂いてもよろしいでしょうか?

まずは売り上げ目標100万円…
あえて主人公とリンクして俗っぽい目標を笑
あとは世界展開、英語ともし可能ならフランス語のローカライズをしたいかなと思ってます。
それから今秋にSRPGStudioのバージョンアップ版である『SRPG studio EX』がでるのですが、
『Ambitious Road』の外伝作品をこのSRPG Studio EXで作れたらいいなと思ってます。
読者の方へのメッセージ
――最後に、読者の方へのメッセージをお願いします!!

まずはこの機会を頂いたかぶらない様、かぶらない様を紹介して下さった葛飾六斎様、そして読者の皆様にお礼を申し上げたいと思います、本当にありがとうございます!
『Ambitious Road』はこの私の29年間に触れてきたもの全てが詰まった20代の総決算とも言える作品で、私自身の「自分史」としての側面もあります。12月には30歳になる私ですが、20代のうちに何かこうして小さくても世界に爪痕を残せることが嬉しく思います。
完成までもうしばらく頂きますが、なんとしても形にして世に送り出せたらと思います。皆様これからも応援よろしくお願いします!
――黒木道仁さん、ありがとうございました!!
終わりに
いかがだったろうか。
黒木道仁さんの、滾る戦記とFEシリーズへの愛とリスペクトは伝わっただろうか?
というわけで、インタビューに答えてくださった黒木道仁さん、並びに黒木道仁さんをご紹介くださった葛飾六斎さんに感謝!!
黒木道仁さんの『Ambitious Road』についての紹介記事も書いているので、こちらも併せて読んでみて欲しい。
なお、『原風景、お邪魔します』では、今後もインディーゲーム制作者の方にお話を伺っていく。
(もしインディーゲーム製作者の方で「ちょっと興味あるかもなぁ」という方がいらっしゃったら、お問い合わせフォームからご連絡いただけると嬉しいです。)
なお、前回の『原風景、お邪魔します』は、爆弾連鎖パズル『ダンジョンボンバー』の作者、作っちゃうおじさんにお話を伺っている。フィードバックからプレイヤーのニーズを逆算することを通して作品を作る創作スタイルに興味のある方は、是非チェックしてみて欲しい。
原風景、お邪魔します#2 作っちゃうおじさんにインタビュー ~フィードバックから探す「プレイヤーが本当に必要だったもの」~ – Kaburanai Games
というわけで、よきゲーマーライフを!
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!!
※ゲーム開発者様へ※
『リリース前語り』では、デモ版・アーリーアクセス版の実際のプレイ体験をもとに、作品が「なぜ」面白いのかまで踏み込むことを重視して、リリース前の作品の紹介記事とインタビュー記事『原風景、お邪魔します』の作成を行っております。
それにより、「この作品について、語ってもいい」という先例を作り、ファンコミュニティの種を蒔くことを目的としています。
ご興味がおありの方は、下記フォームよりお気軽にご連絡ください。

